海が見たい

メモ置き場。自分の話をします。

20200213の日記



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足元に地面があるのが不思議だった。
自重をあずけるという発想はそもそもなくて、だからボクたちは羽ばたかなくてはならなかった。

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一面の白を抜けて、はじめて気づく。
みえていた景色も、ボク自身もくすんでいたのだと。
目をやれば吸い込まれていきそうな掴みどころのない美しい青と、その正体に手を伸ばさんと駆け抜けていく白光。
ただそこにいるだけで折れてしまいそうな光に見つかったボクの肌は明度を増し、伸びた髪はキラキラと金色の輝きを放つのだった。

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「下が気になるの?」
「いっつもみているからさ」

「ぼくたちはここに適応しているんだ。これ以上でもこれ以下でもない、この高度にね」
「雲の上、空がどこまでも青くみえる世界がぼくたちの生存適応範囲」
「でもさ」
「ぼくは本当にここに生まれるべきだったのかな?って思う」
「君はやってみたことある?どこまで上にとんでいけるかって」
「そりゃあ寒いし疲れるし息も苦しくていいことはない。それはそう」
「でも、ぼくはもうずっとそんなことをしている。寒いし疲れるし息も苦しくていいことはない。それはそう。だけど、」

どこまでも続く黒。
突き抜けるような光を振り切る、底のない穴。
あまりに冷え切った空気は、生命の存在を拒んでいる。
恐怖と羨望は紙一重
清廉な拒絶の中にみえた明滅する紫雲。

「ぼくはそこに行かなきゃ」
「って思ったんだ」
「あたたかくて明るくて、呼吸も楽なこの青の中は、どうしてだかぼくには息苦しい」
「きっとそういう風に感じる生き物が、定期的にあらわれるようになっているんだよ。次の青……別の青を探すために」

「もしかしたら君の祖先も、そういう生き物だったのかもしれないね」

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無数の軌跡。
風がみえ、光がみえる。
翼の起こした風は軌跡になり、ひたすらに広い青の中を姿を変えながら移動していく。長い時間をかけて。
交流はなくとも、常に誰かがそばにいるのと同じだった。