海が見たい

メモ置き場。自分の話をします。

20190923 『ヘレディタリー/継承』観ました



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『ヘレディタリー/継承』

観ました。
メチャメチャ好きなやつでした。
あの宣伝*1からこれが出てくるとは思わない……。
自分からは絶対に観ないやつでした。教えていただけて感謝です。

これです*2。限りなくストライクに近い。察し力が高い。

他人事でない、というか、身につまされる内容でした。

ただひたすらに悲しい。
やるせない。
気持ち悪い。

万歳三唱ホラー。

別にそんなイヤな万歳三唱をしたいわけではないのですが、ホラー映画に求めているものはこれです。察し力が高い(二度目)。

題材が普遍的だったのでことが起こるたびに「分かる……つらい……」となっていました。
表現が婉曲的だから余計に共感したのもあります。
見せ方や作者が望む方向への舵取りが上手でした。

最後の方好き勝手しだしたなぁと思いはした*3のですが、それで評価が変わらないくらいにはパッケージングの技術がすごかったです。

ああいうものを打ち負かす方向の作品の方が好きですが、だからこそ定期的に摂取していきたいものでした。そういう思い上がりを諌める意味で。とてもよかった。

お話としてあまりにも悲しい。
でもその悲しさは外から観察する人(映画を見る側)にしか発生しない。
やるせなさの演出が神がかっていました。
どこにも感情のぶつけ先がない。

普遍的だし、自分で咀嚼するしかないやつ。
良い悪いがない、というのも大きかったです。こころもち描き方に悪意を感じなくもなかったです。納得はできます。

個人的には選択の結果、にみえたので、グッドもバッドもないラストに感じました。悲しさとやるせなさはあります。

自分の望みに関わらず持っているものは何か。
その上でやりたいことは?
天秤が釣り合ったときに起こる事象への干渉率を上げるには?
一番の価値とは?
理想や理屈ではなく、本心とは……?
このあたりが刺さったところでした。

環境によって選択は変わる。
理解のできないものとは距離が遠い。
理想と欲望は必ずしも一致しない。
じゃあ、どれだけ自分で自分を望む方向へ向けて支配できるのか。
望みは行動の継続と数でしか実現しない。
積み重ねの多さと長さがものをいう。

当然のことではあるのですが、ただまぁそれをああいう描き方をするのは、上手いな、センス好きだな、となりました。

同時に、諦めの境地みたいで好きではない、となる構造に非常に価値を感じました。
構成力がすごい監督さんだったのでそのへんを含めて意図的なんだろうな、と思いました。
なにか嫌なことあったのかな……とも思いました。

とても良い作品でした。
出会わせていただいて感謝です。

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*1:完全にビビらせにきているおどかし系ホラーCM。

*2:ホラーには「知ることすらできない」「理解すら意味をなさない」ようなものを諦めさせられることを求めている気がするなぁ、という会話から。

*3:たくさんの裸の人間に囲まれるシーンのこと。本編で説明はなかったけど、魔術的な意味のある行為ではあるらしい。